● TL人間学実践クリニック  



 私は、クリニックの診療の現場で、TL人間学実践に挑戦しています。

 昨年、TL総合事務局発行のパンフレットに、当院の取り組みを紹介していただきました。以下、そのパンフレットの中のルポをご紹介させていただきます。

 クリニックの目指すところが、ご理解いただければ幸いです。2011.06.22.

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ー 痛みや病に苦しむ方々が癒され、人生を再生してゆかれるように ー
  その願いに支えられた医療


「具合が悪くなったらあそこに行けばいい」。うめした内科の梅下滋人院長は、地域の皆さんからそのような信頼を寄せられている。その背景には、「TL人間学」に基づく医療によって、患者さんが病を「呼びかけ」として受けとめ、心と体、そして人生をトータルに捉え直し、元気になってゆかれる医療実践がある。

 <医療者である前に一人の人間として>

 梅下院長は内科疾患以外にも、心療内科疾患、軽度の精神科疾患などの分野で、地域において数々の実績を挙げてきた。しかし、その梅下院長に訪れた試練は、娘さんとの不理解だった。
 「TL人間学」を学んでいる医療者の友人たちからのアドバイスも受けて、これまでの自らの関わり方を振り返ると、「女の子だから黙って言うことを聞け」と意見を押し付け、娘の気持ちを聴い】てこなかった自らの姿が見えてきた。
 そして娘はどんなに辛(つら)かったかに想い至った時、後悔とともに「娘は世界にただ一人のかけがえのない存在」との思いが溢れ、その気持ちに呼応するように、父娘関係は変わっていった。さらに当時治療していた二人の引きこもりの患者さんの家族に対しても、梅下院長が「私ならそんなことはしない」との優位の気持ちを持っていたことに気づくと、間もなく一人の患者さんは自立して就職。もう一人も登校できるまでに回復した。
 次の壁は、スタッフの突然の大病だった。梅下院長の心に「医師が上、看護師は下」という差別心があり、それがスタッフを苦しめていた。そう気付いてから、スタッフの気持ちを聴こうと努め、次第に絆が育まれ、医師とスタッフが協働する明るいクリニックとなり、患者数も増えた。同時にスタッフの病も回復していった。これらの出来事を通して、梅下院長は、高橋佳子先生から教えていただいた「医師である前に一人の人間」として、心を転換して出会うことの大切さを、身をもって感じた。

 <癒された私だから、他の方を癒したい>

 うめした内科を訪れる咳嘱息の患者さんからは、「なかなか治らなかったが、ここで良くなった」との声を度々聞く。その治療法について、「咳喘息に顕著な頑張りすぎる傾向を意識化することと、経過観察せず早期にキャッチできる項目で早期発見、早期対応、さらにライフスタイルの改善も合わせた指導が効果を高めています」と、梅下院長は語る。
 また、心療内科においても、新たな治療に挑戦している。その歩みにおいて、とても印象深かった出会いがある。Gさん(女性)は初診時、「突然意識がなくなり、飛び込み自殺をしようとする」と訴えた。
 PTSD(外傷後ストレス障害)が疑われ、傾聴してゆくと、家族の暴力、友人のストーカーのような行為などが重なっての無意識の自殺願望があることが分かってきた。治療を重ねたその後、Gさんは友人に対して勇気を出して自分の意志を表明、嫌がらせは収まった。
 その後、彼女は家族との関係も変わり元気に生活している。運命のせい、家族のせいにして諦めてもよかった人生を自ら引き受け、「私が変わります」という姿勢で道を切り開いたGさんの姿に、人間の素晴らしさ、そして、「TL人間学」への確信を深めた出会いであった。
「TL人間学」を基とした医療では、「病気を、生き方と人生を見つめる『呼びかけ』と受けとめ、患者自身が心と身体、人生をトータルに捉え直す機会を提供すること」を大切にしている。Gさんは、まさにそのことを実践され、生きる力を回復してゆかれた。
 一般診療の後に対話診療を行っている梅下院長だが、心の苦しみを抱えた患者さんに出会うと放っておけなくなる理由がある。それは、1977年のことだった。当時大学生だった梅下さんは、戦火の中、奉仕する医師に憧れ、医学部に進学したものの、「どんなに誠意を尽くしても、どんなに愛しても戦争は終わらないし、世の中は変わらない。自分自身が枯渇してゆくだけ」と世界に絶望していた。そんな心境で日々を過ごしていたが、「TL人間学」を学ぶセミナーで、高橋先生に直接出会う機会に恵まれる。高橋先生は初めての出会いにもかかわらず、信じて語りかけてくださった。「愛とは与えれば与える程、増えるもの」との先生のお言葉に、渇いていた心がうるおい、生きる希望が湧いてきて、これまでに体験したことのない歓びに満たされた。その高橋先生との出会いが、梅下さんの人生にとって大きな転換点となった。
 その後、同じ悩みを感じている人を見ると、「自分が癒されたように、何としても癒してあげたい」と思うようになった。梅下院長は、クリニックを訪れるどんな患者さんに対しても、決して諦めない。患者さんの気持ちを受けとめ、ライフスタイルも聴いて、その病気の背景を患者さんと見つめてゆく。最新医療による治療はもちろんのこと、そういった背景の転換も共に考え、回復に向かって歩むことが診療のスタイルとなった。

 <長寿の時代に求められる医療の実践をめざす>

 梅下院長は生活に不自由のない比較的元気な高齢の患者さんが「先生、ぽっくり死にたい」と、寝たきりになることを怖れる悲しい声を何度も聞いてぎた。今、梅下院長は高橋先生が提唱される対話同伴・予測予防医療(人生の責任と使命を果たすために、健康で長生きすることを支える医療)に大きな希望を感じている。
 そして「TL人間学」を基にした医療実践によって、すべての人が、人生の使命を果たすために長生きしていただけるようにと願っている。


 ご挨拶
 10周年記念シンポジウム
  TL人間学実践クリニック
 元気で長生き
 アフターコロナを迎えて
 複雑困難事例
 クリニック開業30年を迎えて
―心身相関と畏敬、コミュニティー
 

 お薬の効能と自然治癒力、心
 お薬と信頼と納得、感謝の心
 風邪症状の特徴パターン
 長引く咳は風邪でないかも?
 パンデミック(過去の事例)
ースペイン風邪ー
 インフルエンザ三つの感染経路
ーマスク、うがい、手洗いー